望む姿
「――セシリア」
テラスから見える、月明かりに照らされた姿に、私はいつものように呼びかけた。
「あら、どうなさいました? パーシバル将軍」
いつものように、お前は応える。
特に何があるわけもなく呼びかけてしまい、どうしたものかと思う。
「いや…ふと、姿が見えたものでな」
「まあ。…あなたらしくありませんわね」
彼女は、少し笑った。
お前は、いつもそうだ。
誰にでも、その微笑みを絶やさない。
しかしそれでいいのか?
全てを、本来のお前自身を隠して。
「…少し、浮かない顔だな」
「そうですか? 別に普段通りですが…」
「…なら、いいが」
私は彼女に翳りがあるのを見た。
何が曇らせているのかまでは分からないが、なぜ…隠す?
せめて、二人きりでいるこの時だけは。
――本来のお前を、晒して欲しい。
そうだろう?
全てを覆い隠し…誰にも理解されない辛さは、私自身がよく分かる。
やるべき事はあるときは、それでもいいだろう。
だがいつもそれでは、いつか心が凍ってしまう。
自然なお前を私は望む。
「――セシリア…?」
私は、少し不安になった。
月明かりに浮かぶその姿が、ひどく脆くて。
そっと触れても壊れてしまうように見えたから。
「大丈夫です」
また、笑って答えた。
お前は戦乙女。
万人に見せるのはその強さだけ。
だが内側の苦しみは、ほとんどの人間にはわからないだろう。
――しかし、私は知っている…。
「……」
「珍しいのではありません? 心配性なパーシバル将軍なんて」
「…手厳しいな」
お前を案じてはいけないのか?
あの時のような過ちを、二度と繰り返したくないというのに。
消えぬ傷を二度とつけたくないのに。
失ってはいけないと思うのに。
「お気遣いなさらずとも、私は平気です」
前は近いと思った存在が、ひどく今は遠く感じる。
このままでいようと言うように。
決してこれ以上近付いてはならないと言うように。
だが…それでいいのか…?
どうか、私には全てを―――。
<後書きと言う名の痛さ・その2>
二人視点でようやく完結。しかし…痛い、これ。
ほとんど本当にパー→セシ。
これから二人はどうなるかって?
一応ハッピーエンドだけど…
これの続き……(自主規制)
ありがとうございましたぁ〜。
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