099:「光あれ」






「お前――リオンに似てるな」


 言われた人物は紫やら銀やら、灰色なのだかわからない瞳を瞬かせた。
「…なぜ、そう仰るのでしょうか? エフラム王子」
 尋ねられた当人、ルネス王子エフラムは答えた。
「考え方が、よく似ているなと思う。他人を救いたい。
 闇魔道でもそれは可能だと…そのために必死になっているリオンを、俺とエイリークはよく見ていた。
 時々その姿が重なるんだ」
「…昔から私はリオン様のお傍にいましたから…そのせいでしょう」
 相手は、そう答えた。
「…そう言えば、お前はいつから宮廷勤めをしていたんだ? ノール」
「……幼い頃からです」
 間はあったが、彼――ノールは答えた。
「生まれた頃には父はおらず、母も病で亡くなりました。
 身寄りもおらず、路頭に迷った所を皇帝陛下に拾われたのです。
 歴史や魔道を学ぶ中で私はリオン様の側役に任ぜられ、それからをずっと過ごしておりました。
 リオン様に歴史や魔道を教えたのはマクレガー司祭でもありますが、私でもあります」
「道理でお前からものを教わる時、リオンの影がちらつくわけか。でも、どうしてだ?」
「? なにが、でしょうか」
 瞳を再び瞬かせたノールに、エフラムは答えた。
「どうして素性のわからない人間を、皇子の側役に任命したんだ?
 もしかして皇帝はお前を…いや、お前の親を知っていたのかもしれないな」
「…そうかもしれません。皇帝陛下は親のいない私を実の子のように慈しんでくれました。
 まるで兄弟のように私とリオン様は育ちましたから」
「だろうな。俺とエイリークがグラドに来ていた時、見たからな。仲の良さそうなお前とリオンを」
 エフラムは思い返した。
 気の弱いリオンが数少ない笑顔を見せる時。
 自分達との会話の時。
 研究が実った時。
 そして、側役の闇魔道士といた時…。
 だが、今そんなリオンはいない。
「でもお前を幽閉……か。やはり原因は『魔石』か」
「…ええ。私たちの業と言えばそうでしょう。それをリオン様は一身に受けてしまった。
 ただ、エフラム王子。ご理解いただきたいのは――」
「わかっている。お前もリオンも、闇魔道で人を救えると。それを証明するために聖石研究をしていたのだと。
 闇の中にも光を差しこみたかったのだと」
「…ありがとうございます、エフラム王子」
 ノールは恭しく礼をした。
 見てエフラムは思う。


 親友を、救えるだろうか。


 目の前の闇魔道士を救えるだろうか。


 偏見という闇を払い、救えると証明される日は来るのだろうか。



 二人の未来に、光あれ。



 エフラムは、そう願った。






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